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Research

1.心臓

1.心臓管腔形成を調節する力学―細胞内シグナル

​我々の身体は細胞が受け取る情報の違いに起因して、異なる特徴をもつ細胞集団を構成し、機能的組織を適切に形づくります。私たちはとくに「心臓の形づくり」に興味をもち、力学作用の理解を目指しています。研究対象として小型魚類であるゼブラフィッシュの初期胚を用い、生体イメージング解析から心臓を形づくる過程を捉えます。 これまでの研究から、時空間特異的かつ直接的な力学応答シグナルを見出し、心管腔の弁形成に関わることを明らかにしてきました。一方で、心臓は管腔形成期より継続的に拍動しています。力が恒常的に生じる心管腔内で、生体はどのように力学応答を適切に調節するのでしょうか?私たちは心臓形成期における力学応答シグナルに着目し、秩序立った血流循環のために働く心臓管腔形成機序の疑問を解き明かします。そしてどのような力覚センサーを介するのか、また発生過程にとどまらず心疾患病態との関連に至るまで、作動原理の全容解明に取り組みます。

​具体的なテーマ

細胞周期の可視化による力学情報―細胞応答の理解、物理情報センサーの探索、物理情報による弁間質細胞(VICs)の分化動態機構など

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ゼブラフィッシュ心臓管腔形成と力学応答シグナル(心内膜Ca2+流入)
A. ゼブラフィッシュ胚心臓心筋(緑)と血球(マゼンタ)の可視化像。B. 心房と心室の境界部に房室弁が形成される。房室弁は3層構造の管腔側に位置する心内膜からなる。C. 上部房室弁の早期形成過程。受精後2日から房室弁領域に位置する心内膜細胞が間質側に向かって移動を開始し、折りたたまれた構造が形成される。その後、細胞間の接着が弱まることでリーフレット構造となり、血液を正常に送りだす機能的な弁が形成される(上図)。この形成過程に限定して、Ca2+流入が弁領域で強く認められる(下図)。
2.生体

2.生体内で物理情報を操作する新たな方法開発と応用

多様な局面で作用する生理的な「力」の働きを知ることは容易くないですが、私たちはユニークな力操作法を開発することで直接的な力作用を捉え、力学応答機構の理解を深めることを目指しています。これまで、ゲル素材ビーズを心臓管腔内に留める外科的手技を確立しました。ここで挿入されたビーズは拍動と血流を妨げることなく心拍動にあわせて管腔内で運動します。異所性の力発生がイメージング結果を基にした力学値シミュレーションから算出でき、心管腔を構成する心内膜では、ビーズの動きに依存した力学応答シグナルが観察できます。さらなる検討として、力学的操作性に優れ、生体組織への影響が低く、かつ組織透過性が高い磁力に着目しています。磁気ピンセット法を実装して、力学作用の検証に取り組んでいます。

具体的なテーマ

心臓内血圧の測定系確立、磁性体を活用した生体内力学操作、レーザー照射による物理情報操作

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個体内において力を操作する手法
A. 拍動と挿入したビーズの動きを基にした心房管腔内で発生する力のシミュレーションでは、心房拡張期から収縮が開始するとビーズが移動し、ビーズが近接する領域で異所的な強いずり応力が発生する(左図)。また、実際に力の発生に依存して力学シグナル活性がみられる(右図)。B. ゼブラフィッシュ個体への磁気ピンセット法の応用。胚体外の磁気プローブを操作することで、心管腔内に留置した磁気ビーズ移動に伴う力が発生する。発生する力に直接依存して細胞内Ca2+ 流入(黄色矢頭)が誘導できる。
3発生

3.発生期の心臓生理機能

ゼブラフィッシュの心臓は受精後2日目で拍動し,心房と心室が形成されます.受精後2日目の心房と心室は横に並んでいますが,7日目では縦(背腹方向)に並びます.心房と心室の配置が変わっていく間の血行動態や遺伝子発現の解析を通じて,「チカラ」と「ブンシ」の両側面から,この現象の理解に努めます.

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